辞令書を廃止することについて!行政の完全ペーパレス化
神戸市(2018年)山形県(2012年)長野県(2012年)岡山県(2002年)と全国の自治体で進む辞令書の廃止
採用、退職、不利益処分など法律上必要な者を除き、辞令そのものを廃止する流れが全国の自治体で広まっている。
事務改善やペーパレス化が目的。
職員が閲覧できる庁内ネットワークに異動通知を掲載したり、口頭による内示で済ませる。
人事異動の内示をもって辞令の交付に代える。
新規採用職員とか国や県からの派遣職員などの場合は儀式的に辞令書を交付。
年度の変わり目は、市役所にとって繁忙期。
そんな時期に、大勢の職員が辞令交付のために席を離れ、また辞令を持参してあいさつ回りをする現状を改める。
法的に問題はないか
任命行為のうち発令主義によるものについては、これに係る辞令書の廃止を実現することができる。
※発令主義 採用、昇任、転任、配置換、任期更新の場合や臨時的任用を行った場合又は臨時的任用を更新した場合のほか、復職、失職、辞職の昇任、退職(免職又は辞職の場合を除く)など
なお、到達主義による懲戒処分や分限処分などのように書面の交付をもって行わなければならないもののほか、育児休業などのように規則等により辞令書の交付を義務付けられているものがあるので注意を要する。
※到達主義 職員に不利益を与える処分である降任、休職、免職
また、地方公務員については、職員の任免の手続について、書面(辞令)の交付が必要かどうか、要式行為かどうかについては、法律上は何ら規定がないが、条例又は規則等で必要な規定を設けることは可能である。
「地方公務員関係法令実務事典」(第一法規) 3003頁
村立小学校助教諭の講師への任命替えにつき辞令の交付がなされていない場合においても、同人が教育職員免許法上講師に任命される資格を有し、任命権者である県教育委員会から郡教育出張所長及び学校長を介して任命替えの通知を受けているときは、右意思表示だけで任命替えの効力が発生するものと解すべきである、とある。
(山形地裁 昭和32.1.16判決昭30(行)2号)
定期人事異動の発令ならば、必ずしも辞令書によらなくても法令上は問題ないことになる。もちろん、辞令書の交付によることが好ましいことは言うまでもない。
任命行為(つまり辞令)の効力は、いつ発生するのか?
「行政行為の効力発生の一般原則は、到達主義によっており、任命行為も法律に特別の定めがない限り、相手方に意思表示が現に到達し、または相手方が了知しうべき状態におかれたときにその効力を発生するものとされている(昭和25年11月18日法意一発第89号)。したがって、一般的には、辞令が交付されたときに任命行為の効力が発生することになる」(「逐条地方公務員法」橋本勇著/学陽書房)とあります。
「逐条地方公務員法」は、次に「しかし、降任のように不利益処分に該当するものについては、常に到達主義によって効力を生ずるものと考えなければならないが、その他の任命は、むしろ発令の日付の午前零時から効力を生ずると解することが任命権者の意思に合致し、職員の利益にも反しないものと考えられる」と続きます。
処分に関する発令は辞令書によらなければいけませんが、定期人事異動の発令は、これまでの内示を訓令で行い、その施行日を4月1日とすることで代えようと思っているのです。
【千葉県職員人事事務取扱規程】
(人事異動発令通知)
第八条 職員の任免等の発令は、原則として庶務共通事務処理システム(千葉県職員服務規程(平成十七年千葉県訓令第五号)第二条第十八号に規定する庶務共通事務処理システムをいう。以下同じ。)により本人に通知して行うものとする。ただし、当該職員の任免等の発令が、採用、退職、分限処分、懲戒処分等に係るもの及び派遣等に係るものであるときは、辞令(別記第六号様式)も併せて本人に交付するものとする。
2 総務部総務課長は、職員の任免等の発令を、採用、配置換え、出向採用等の場合にあつては新所属長に、出向、退職等の場合にあつては現所属長に、それぞれ庶務共通事務処理システムにより通知するものとする。
第6条 次の各号のいずれかに該当する場合においては、文書その他適当な方法をもって辞令書に代えることができる。
(1) 条例、規則等の改廃による組織の変更に伴い、職員を出向させ、転任させ、又は配置する場合
(6) 前各号のほか辞令書の交付によらないことを適当と認める場合
(辞令の交付)
第3条 職員の人事発令は、次条に定める場合を除き辞令を交付して行う。
第4条 次の各号のいずれかに該当する場合は、通知書その他適当な方法をもって辞令の交付に代えることができる。
(1) 例規の改廃による組織の変更等に伴い、職員を転任させた場合
人事院規則八―一二(職員の任免)(平成二十一年人事院規則八―一二)